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号砲―箱根駅伝90th―  (1)指揮官・西弘美駅伝監督  

 箱根駅伝の号砲が、いよいよに迫る。明大は5年前に箱根の舞台に戻ってから、年ごとに上昇をたどった。前回は終盤まで3位争いを演じたが、9区松井智靖(営3=世羅)の脱水症状による失速で後退。7位に沈んだ。しかし、今年度には箱根駅伝経験者が9人残り、5000m13分台保持者も史上最多の11人在籍。数ある強豪校にも劣らない層の厚さを誇っている。総合力を武器に、65年ぶりの箱根制覇に挑む。
 ここでは、初春の箱根駅伝に先立ち、西駅伝監督やエントリー選手16名の特集をしていく。号砲が鳴る前日・元旦まで、ぜひお楽しみに!
[号砲まで、あと15日]
 第1回は明大競走部を率いる西弘美駅伝監督。就任13年目の箱根駅伝で初制覇を狙う指揮官の1年間、そして今回の箱根駅伝の見方を聞いた。


――まず、前回大会を振り返っていただきたいのですが?
 総合的に7位。8区の途中まで2位3位争いをしていたし、誰が悪いとかそういうことではなくて、チームとしての順位として真摯に受け止めたうえで、この1年間やってきた。最後の2区間が悪かったからじゃなくて、よく頑張って、なんとかシード権が取れたというのは地力がついたなということだと思います。悪かったということではなく、ポジティブに考えた中で、また次に向けてスタートした1年でした。選手にもそのように伝えています。1人を責めるとかいうことではなくて、次にどう生かしていくか、同じことを起こさないための対策をどうするかということを意識してきた。もしかしたら(前回は)そういうところの僕の詰めの甘さが出たのかなと、もしかしたらそういうところで見過ごしてしまった部分があるかもしれない。本人に聞いても体調は万全な中で臨んだというし、小さいところであったかもしれない。収穫としては1区から流れにしっかりついていけたし、5区の大江(啓貴・平25年政経卒・現大阪ガス)も体調が万全ではない中であの風の中よく頑張ったかなと。いいレースはしていたと思います。足りなかったのは9区10区。いい面で考えれば、棄権することなく良く頑張った。逆に言えば(今回は)そのあたりの落とし穴をどう防いでいくか、ですね。

――今年のチームの特色はなんでしょうか?
 大エースはいません。小粒ばかりですね。強いて言えば「金太郎飴」じゃないけど、そういうことです。ただ、強みで言えば9番目10番目も決して見劣りしない。13人くらいまではそん色ない。それは強みとして受け止めています。(メンバー候補は)実質18名いたし、それだけそん色なかった。そこを16人に絞りましたから。

――優勝候補として名前が挙げられるようになった理由はなんでしょう?
 学校が頑張ってくれたおかげですね。選手の勧誘もできるようになったし、数年前から比べれば、高校生がうちを評価してくれているということもあります。今は少なからず認知度が上がってきたし。ただ、強くなれば集まるかと言われたら、やはり敬遠する人もいますしね。僕らくらいの力だからこそ、集まってきたのかな。

――今年1年間、強化してきた部分はどこでしょうか?またテーマはなんでしょうか?
 基本的には毎年変わらないが、やはり夏からの体力づくりをしっかりやっていくこと。また(前回大会のような)ああいったアクシデント、低体温症、脱水症状、そういったものをどう防いでいくか。練習でも多少、水を我慢させるところは我慢させて、慣れさせていく。過保護というくらいは今まで早めにやっていたのを、30`走でも20`くらいまでは我慢させるとか。もちろん暑さも考慮しながらね。全部出さないような時期もあったし、どこまで自分の体力が耐えられるのか。それに「飲む」ということへの慣れというところの対策ですね。難しいですけど。他には、毎年同じようにやっていますけど、選手たちにはトラウマにならないというところが1番大事ですよね。そして絶対にやってはいけないのが選手を責めるということです。それは一切なかった。みんなでの結果が7位で、5年くらい前まではシードを取って喜んでいたのが、7位でもションボリというところもあるし、それを受け止めて再びスタートしていますから。いい意味で雰囲気はいいです。もう今は7位でションボリするチームになってきているんです。(今年は)夏から選手の故障は全くないので、これからその分つけが回ってくるかもしれないですよね。

――出雲駅伝、全日本大学駅伝を振り返っていただけますか?
 出雲は昨年が悪すぎたというのもあるし、7位という結果も手放しでは喜べない。点数をつけるなら20〜30点くらいですね。全日本は70点。箱根は100点を目指してやっているけど、出雲では楽観していた部分がその通り出てしまった。3週間で修正して全日本でそういう部分は修正できたが、決して喜べる3位ではなかったですよね。やはり2、3、4区が力を出せなかったし、逆に5、6、7、8はしっかり力を出してきた。だからその3区間がしっかり力を出せれば、トップ争いをしながら落ち着く順位が2位であれ3位であれ4位であれっていう、そういう収穫は得たかった。そこがマイナス30点の部分。結果は過去最高タイだったが、手放しで喜べないのは、八木沢(元樹・商3=那須拓陽)が下位に沈んで、横手(健・政経2=作新学院)も区間6位だったけどタイム出なかった。4区のエース区間でも有村(優樹・商3=鹿児島実業)が2分30秒くらい村山(謙太・駒大)にやられた。その3区間がもう少し良ければ、という課題は残った全日本だった。じゃあそこから2か月くらいで箱根にどう持っていくか。今までやってきて、選手の体調的には非常にいいと思います。

――北魁道主将(商4=世羅)は出番がなかったですが、状態はどうでしょうか?
 調子は悪くはないです。全日本も決して悪くはなかったですが、それ以上にほかの選手が良かったんです。出番は無かったんですが、最後の箱根に懸けている部分はありますし、言葉数は少ないですがやはり練習の中で引っ張っていくのは大きいです。率先して引っ張っていく姿が見られますから。

――全体として自分たちの位置をどう見ているのでしょうか?
 箱根の場合はどこの大学に勝つとか、そういうことはあるかもしれない。ですけど、この1年の中では「優勝」という言葉ではなく、一人ひとりがどれだけ全力を出し切れるか、ということの意識づけをしっかりやってきました。私が「優勝しよう」とか「3番以内」とか言うよりも、目標に向けてどれだけ頑張れるか、自分でやっているかということ。それはやっぱり、本人たちが目的意識をしっかり持ってやってきています。だから位置づけとしては勝てるかどうかはわからないですけど、勝つつもりではやっています。もしくは三強を崩したい。ある高校の先生が言うには「指導者が勝とうと思っても、なかなか勝てない」というのも聞いたことがありますし、やはり選手一人ひとりの意識がどう動いていくかというのが大事なんです。私が「勝とう」と言っても選手たちがそうではなかったら、動かない部分もありますので。だから課題を選手自身が作ってそれに向かってやっていく。それが今のうちのチームです。メンバーに入った16名、それ以外も含めて41名がその一つの目標に向かってやっています。(5000mが)17分くらいの子もいますけど、一生懸命やっています。それが大事だと思います。今回選ばれなかったから「もういいや」と自暴自棄になっている子はいません。それは選手たちがみんな自主的に動いているというのが浸透してきた証拠なんじゃないかなと思います。

――富津合宿の収穫はいかがでしたでしょうか?
 記録とか内容とか見れば、今までで1番いいです。誰というより全員が良かったですね。ただ、1人だけ足にマメができて戦列を離れた子もいますけど、それ以外はもう完璧ですね。これから大事なのは故障と風邪。去年は初日で5人が戦列を離れていたし、1人が風邪をひいていた状態だったから。でも今年はそれが一人もいないですね。

――13分台の選手が多いですが、それに対する評価はどうでしょう?
 僕は13分台というのを全く評価していないんです。もう駅伝は28分台の方がよりつながっていく。でもやはりスピードがあるというのも評価はできますし、それに負けないスタミナをつけることも必要。ただ、狙って出したわけではなくて、出てしまったというのが印象。決して安心とか楽観視はしてない。それ以上に速さじゃない強さを求めてやっているので。だから悪条件の中の今年の箱根のような中で勝った日体大なんかは、はっきり言ってどこも想像してなかったと思いますし、あれが本当の強さなんだというところを見せつけられた部分はありますよね。やはり、ああいうコンディションの中、走力以上の精神的な強さを見せられた。箱根駅伝なんていうのは自然との闘いというのもありますしね。(求める強さをつくることは)難しいと思います。その子の性格もありますし、いろんなチームの雰囲気もありますし、1年1年が本当に違いますから。だから「今年はこういう雰囲気になれ」と強制したことはこれまで一度もありませんし、思ったこともない。でも今年の中でキャプテンがいいとか4年生がいい、3年生がいい、そういった1年の中で一つの形が作られていくと思っているので。

――三強を崩すための理想的なレース展開はどういうものでしょうか?
 やはり流れに沿うということですね。うちの場合は大砲がいない分、コツコツ小銭を稼いでいく。ただし、9、10番目もそん色なく強いので、つなぎ区間でどれだけ勝負ができるかですね。要の区間で辛抱して、つなぎで貯金を作れるか、ですね。
選手の走りを注意深く見つめる
選手の走りを注意深く見つめる

――山上りはやはりポイントになりますか?
 ポイントになりますね。ここ何年かは長くなって大きな差になりますから。ちょっとした体調の差で1分から2分離されますからね。今の5区はものすごく重要ですよね。これまでは大江がいたし、その前も悪くはなかった。うちとしては山上りはこれまでそこそこ無難にこなしてきているとは思っています。そこの後継者を念頭にやってきたけど、未知数な部分がありますから。大江が堅実に走ってきたところにぽっかり穴が開きましたから。今の選手たちに言っていることは「上りをやれるか?」ということ。それから「この子は上れるな」という子を、うちの主力選手で暑い段階で結構上らせた子もいます。その中で本人も「やっぱりダメだ」と言ってきたりして、今のところ3人に絞ってやっています。5区で成功してきたのはやはり偶然です。大江にしても山下りする予定だったから。(適性のある選手というのは)性格的にはコツコツ、投げ出さない子ですね。コツコツ上っていける性格。もう一つは走力。適任といっても走力が無いと通用しなくなってきた時代です。1時間20分を切っていくにはやっぱり平地での走力も必要なんです。あとはその子のモチベーションも当然ある。

――今回走る選手には2、3年続けて走ってほしいですか?
 だから柏原君みたいに1年からあれだけ強ければ相当楽ですよね。5区を任せるのは若い学年というのも当然あり得る。というのも、本当に1年生のこの子がいければ行かせます。もし今年、大江がいれば平坦な道でも戦えるからおもしろかったんだけど、来年は廣瀬(大貴・営4=洛南)が抜ける。そういうのはどこも一緒だと思うんだけど、1番いいのは2年生くらいがドーンと行ってくれること。そうすればあと2年は楽かな。指導者からすればそういうのはありがたい。ただ、1年生というのは意外と怖いもの知らずで、ポンと走っていく可能性もあるんですよね。経験が無い方が、かえって4年生で考えて走ってしまうよりも1年生のほうがいいこともありますし。

――記者会見ではポイントの区間として5区とともに3区もあげていましたが?
 うちには大砲がなくて、1、2区は他に比べてそれほど遅れは取らない選手です。でも駒沢の1区、2区は抜群なんですよね。そこで2分はやられるだろうと。そうなってくると、事後収拾じゃないけど、3区でゼロに戻したい。だから3区を大事にしたいし、4区も一緒。それができれば2区の選手には「安心して走りなさい」と言うことができる。だから少なくとも4区が終わるまでには相殺したい。それで5区でどれだけ粘れるかだと思うんですよね。

――往路が終わった段階で、どれだけの差であれば目標を達成できると見ていますか?
 2分ですね。3分は結構痛いです。2分だったら射程圏内かなと。逆に小田原の時点でトップと並ぶくらいでは山に入りたい。そして悪かった場合でも2分以内。だから4区までには戻したい。その目標は3位以内というのもそうだが、あわよくば...というのもある。逆に山から下りたところで離されていたら届かないだろうし、離されなければ3位以内も優勝もあり得るという見方です。あとは下りが廣瀬ですから、2分であれば小田原で逆転できるだろうと。ただそれは相手チームが誰?ということにもなってきます。指導者の中で1番怖いのは中村(匠吾・駒大)がどこに来るかなんです。それによって早稲田と東洋がどのカードを切ってくるかなんです。中村が1区に来れば、当然早稲田は大迫(傑・早大)、東洋は設楽と1番強い奴を持ってくる。設楽→設楽で来るか、設楽→服部で来るか。だからみんな中村次第なんです。なぜかというと、1区のレースがハイペースになるんです。全日本を見る限り、中村という選手はペースを落としません。それに押していけるんですよね。全日本では設楽を30何秒離しましたしね。そして、それに対応するのはやはり大迫なんです。そうなると後が離れます。大迫が一人で行っても、そこまで離せないんです。だからそこに設楽も来るし、そこでうちがどうなるかなんです。追うのか、後ろに下がるのか。それで後ろで牽制し合ったらまた1分2分は離れますから。僕も渡辺監督(早大監督)もそこでもしかしたら12月29日(区間エントリー発表日)は当て馬をしてくるかもしれない。だから、文元(慧・政経3=洛南)はそういう対応が上手くできます。区間賞を獲るという選手ではないけど、追うべきか下がるべきかという対応ができます。だから全日本のときも14分1桁で対応して4番手でしたし。だから中村次第で全然変わる。ただ中村以外を置いてきたときの反応は変わります。東洋もそれで動いてくると思います。

――粒がそろっているが、他大学と比べて自分たちの戦力をどう分析していますか?
 悪い流れになった場合に上に行くためには、やはり大砲は必要なんです。だから悪い流れにならないために1区から順調にいきたいというのがある。全日本のような展開はしたくないですね。(8、9、10区の層は)大分厚くなってきていると思います。それよりも6、7、8区ですね。9区は1分半から2分はやられるでしょう。窪田(忍・駒大)が来るでしょうし、窪田に2分以内で来れば御の字。悪く見たときの2分ですね。窪田が8分半くらいで行けば、10分そこそこで。そうすると6、7、8でなんとか。9区で2分遅れて、アンカーで逆転できるかなと。(あえてエースを挙げれば)大六野ですね。エースになっていかないといけない存在でもありますしね。駒沢も強いですけど、後手に回った時にどうなるか。そうなったら弱いかなと思います。克服してきたら話は別ですけどね。ただ、2区で村山を使うなら1区の出遅れは防ぎたいですよね。それに西山(雄介・駒大)がいますし、油布(郁人・駒大)がいますし、上りはもしかしたら2年生の馬場(翔大・駒大)か西山かな。ちょっと遊んでくれるといいんですけどね、中村1区じゃもったいないかなみたいな。他の子でそこそこ走ってくれればいいよ、みたいな。

◆西弘美(にし・ひろみ) 1952年7月10日生まれ。福岡・飯塚商高から久留米井筒屋を経て、日本大学入学。1年時の日本インカレ5000m・1万mで優勝。4年時の箱根駅伝では、1区区間新記録を樹立した。卒業後は、ヤクルト、大昭和製紙、スズキで実業団選手として活躍。現役引退後は、スズキ陸上部監督、日本大学コーチを経て、2001年、明治大学競走部長距離コーチに就任。現在は、駅伝監督としてチームを率いる。

[取材:片貝晋]

 次回は、本日発行しました箱根駅伝特集号の紙面に掲載した廣瀬大貴(営4=洛南)、大六野秀畝(政経3=鹿児島城西)、八木沢元樹(商3=那須拓陽)のコメントをお届けします。アップは明日、12月19日(木)の予定です。お楽しみに!



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