検索
 HOME > 明大スポーツ

絶賛発売中の新作『5時過ぎランチ』

明大スポーツ  明大OB芥川賞作家・羽田圭介氏インタビュー(前編)

 
 4月20日、明大OBであり芥川賞作家の羽田圭介さんの新作『5時過ぎランチ』が発売されました。今月1日に発行しました『明大スポーツ新入生歓迎号』で羽田さんを特集しましたが、紙面の都合で入り切らないコメントが多くありました。しかし、ぜひたくさんの人に読んでいただきたいとの旨を伝えたところ、羽田さんからもご快諾いただけたので、今回、前編後編にわたり掲載させていただくことになりました。前編では新作や明大明治高時代に書いた処女作の制作秘話を語っていただきました。

――早速ですが、新作の『5時過ぎランチ』について教えてください。

 「お仕事小説になっています。5年前に雑誌には掲載した中編小説の連作集なんですけど、ちょっとずつつながりはあるようにはなっていまして。ガソリンスタンドで働いている二十歳の女性従業員と小麦アレルギーの殺し屋と、写真週刊誌の女性記者の3人を中心とした物語です。3人共すごく仕事が忙しくて、ご飯を食べる時間が不規則なんですね。仕事って大変だよね、でもそれくらいのやりがいを持てる何かは生きる活力になるよね、というエンターテインメント(エンタメ)小説になっています。普段純文学を書いているんですけど、今回はポップな感じのエンタメ小説になっているので、学生の皆さんぜひ買ってください(笑)。明治って生協って入っているんだっけ?明大マートか。御茶ノ水でも地下に本屋あるよね。確か安く買えるよね?10%オフでぜひ買ってください(笑)」

――新作を書いていた当時はどのような状況でしたか。
 「これを書いていた時は芥川賞を取る数年前だったので、何を書こうかすごく模索していた時期でした。高校時代にデビューしてから、学生兼小説家であったので、小説で行き詰まっても学生生活とか、会社勤めとか言い訳できました。でも会社を辞めて以降は学生でもない本当にただの小説家になって…。独身で1人暮らしだと24時間全てを自分で管理しないといけないので、生活に起伏をつくるのがすごく大変なんですよね。専業作家になって5、6年は本当に苦悩していました。その『自分は何を書いたらいいんだろう』って毎日膨大な数の本とか映画に接しながら書いていた時期の作品を、何度も改稿しこの度ようやく本にできました」

――5年前の作品をこのタイミングで出すことについてはどう捉えているのでしょうか。
 「5年前雑誌に掲載した直後に本にしなくて良かったです。というのも、雑誌に掲載した後に何度か大幅な直しをやっていたんです。そのたびに『なんか全然駄目だな』って思うくらいに書き直しまくって。だから5年前よりまともな小説になっています。ここ数年間、そして向こう数年間は、純文学雑誌に書く最新作が僕の最良の作品となっているはずです。一方で、その時期の僕の考えや文章にはまらない読者の人も出てくると思うんです。というのも感想文をもらうと『○○が一番好きです』って感想をもらったりして『それ好きなの!?』って自分にとっては過去作の意外なやつが一番好きって言われたりするので。作者にとっての最良≠ニは別に読者にとっての最良≠チてあるんだなって思って。自分が一番興味を持っていることって、2年、3年じゃそんなに変わらないんですね。だから自分がまっさらな気持ちで今書きたいことを書くってなると、去年くらいから再来年までそこまで変わらないと思うんです。そうすると向こうしばらくは自分の興味のあるものが似通ってくる中で、5年前に書いた作品を一度挟んでおくのはタイミングとしてベストなんじゃないのかなと」

――処女作の『黒冷水』は高校時代の作品でしたが、どのような流れで書かれたのでしょうか。
 「大学受験をする必要がなかったので。高2のGWで初めて小説を書いて、それは自分でボツにして。またその後、高2の夏前後に書いて。400字詰め原稿用紙150枚くらい書きボツにしました。高2の12月から冬休みと春休みを挟み4カ月で「黒冷水」っていう作品を書きました。授業中とか休みの日、家に帰ってから書いて、2003年3月31日の賞の締切日に投函しました。それから高3の7月に最終選考に残ったという連絡が来て、8月末に受賞が決まった。初めて応募した作品で小説家デビューという形ですね」

――初めから小説を書けたということですが、それはなぜでしょうか。
 「電車での長い通学時間を利用し、よく本を読んでいたからだと思いますね。文章能力を上げるのに必要なのは読書です。本さえ読んでいれば書く練習や写経なんてしなくても、それなりになっていくというか。好きでやっているものが一番無意識で吸収できて上達するんだと思います。その代わり量は絶対に必要です」

――明大明治だと勉強が大変だったのではないでしょうか。
 「全然大変じゃなかったですよ。明治大学に入れる付属は明明、明中、明八ありますけど、明明は万引きで補導されたり赤点がめちゃくちゃ多いとかじゃない限り、96、7%はみんな明治大学に入れたんですね。明中、明八って成績上位者じゃないと大学に上がれなかったので、大学に上がれる人は結構勉強をちゃんとやっている人が多かった。でも明明は赤点と悪さだけ注意しとけば、みんな上がれちゃったので、大学に入ると明明が一番バカ。英語とか第2外国語とか全然できなかったなあ…。大学1、2年のドイツ語とか地獄だったな…。男性名詞とか、女性名詞とか、何言ってんだろうって(笑)。当時『ドイツ製品かっけえ』とか考えていて、そんな理由でドイツ語を選んじゃって。中国語にすれば良かったな…。ドイツ語とフランス語はやめろって言いたいですね(笑)。そもそも文学部入っとけよって話なんですけども」

後編に続く)

 ◆羽田 圭介(はだ・けいすけ)
1985年東京都生まれ。1998年に明大明治中に入学。2003年『黒冷水』で第40回文藝賞を受賞し小説家デビュー。2008年に明大商学部商学科を卒業。2015年に『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞して以降、さまざまな業界で活躍している。今回中野キャンパスで取材させていただき、サインを書いていただきました。事務室で飾っていただいているので、興味のある方はぜひご覧ください!


[日野空斗]

ニュース
 
 この記事へのご意見はこちらからお寄せください。
 今後の明大スポーツ運営への参考にさせていただくほか、ご意見としてご紹介させていただく場合もございます。
 ※必ずEmailアドレスをご入力ください。
 ※htmlタグなど、一部本文中にご利用できない記号がございます。
Email: