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22年ぶり日本一へ導く


Exceed  (2)「明治史上一番のチームに」田中澄憲監督  

 覇権奪回まであと一歩。全日本大学選手権で準優勝を果たした昨シーズン。残されたのは優勝だけだ。田中澄憲新監督の下、新たに掲げたテーマは「Exceed」。福田健太新主将(法4=茗溪学園)を中心に常勝軍団復活を証明してみせる。本企画では22年ぶりの頂点までの道のりを追っていく。
 第2回は田中澄憲監督。昨シーズンはヘッドコーチとして加入し「マインドセット」を合言葉に、チームを大学選手権準優勝まで導いた変革家だ。監督として迎える初シーズン、そして大学日本一に懸ける思いを伺った。(この取材は4月3日に行ったものです。)

――ヘッドコーチとして迎えた昨シーズンはいかがでしたか
 コーチとしての役割は初めての経験でした。コーチというのは「こういう結果を出すために、こういうトレーニングするんだ」と選手たちに戦略を示していくと思いますが、自分の実体験がなかったので「本当にそうなのか」と不安になることがありました。しかし、選手がそれにコミットしてマインドセットして「勝ちたい」という気持ちで取り組んでくれました。彼らが成長する姿を見ながら自分自身も勉強して成長できたし学生に助けられたシーズンでした。

――どのように「マインドセット」を選手に取り入れていきましたか
 難しくなかったと思います。というのは、その前のシーズンは3回戦で京産大に負けたじゃないですか。明治の選手であればそのような不本意な結果に対して「悔しい」という思いがあると思うので、それがエネルギーになると思います。そんな中で「本気で勝つためにどうしたらいいのか」と言ったら、自分たちで変わらなきゃいけないっていうマインドセットはそんなに難しいことではない。昨年は帝京大に2点差で勝てたシーズンでしたが、ああいう試合をすると周りは「今年こそは絶対勝てる」という目になりますし、期待してもらっていると選手も感じていると思います。だから今年は、勝たなきゃいけないシーズンの中でどうやって結果を出していくかというところになってくるので、今年のほうが昨年に比べて難しいと思います。

――ご自身の考えは当初思い描いていたところまで浸透しましたか
 昨年の最初のキックオフミーティングで前の年の映像を見せました。トライを取られそうな時にみんな歩いて帰ってきたり、タックルして寝っぱなしとかあって。「それが本当に勝ちたいチームなのか、でも本当に勝つチームは違うでしょ」と話しました。難しいことではなくて、トライ取られそうな時にみんなが走って戻ってきてセーブする、そういうのが本当の勝つチームです。だからそういう部分で昨年は、ラインブレイクされても歩いて帰る人がいなかったし、逆にターンオーバーからのアタックのところでもトライを取れたので、大事な部分は変えられたかなと思います。あとは練習に取り組む態度や姿勢だったり、本当にきついときに手に膝をついたり、苦しい顔をして弱い態度を見せるなとは練習中から厳しく1年間言い通したので、そういうところが単純に変わったのかなと思います。

――2月にはエディー・ジョーンズ氏の下で研修を行ったそうですが
 エディーはサントリーで選手生活最後の時の監督で、スタッフになった時も一緒に仕事をしていました。連絡は取り合っていませんでしたが、昨年たまたまアンサンブルラグビー(指導者たちに知識を伝授するイベント)に行かせてもらいました。向こうはまさか僕が明治でコーチをやっているなんて思っていなくて嬉しそうでした。実は現役最後の時に「お前はコーチに興味があるのか」と彼に聞かれたことがありましたが「全然コーチに興味がない」って言っていました。その時はふーんって言われたんだけど、もしかしたらエディーは「コーチやったらいいんじゃないのか」って言いたかったのかな。そうしたら大学選手権の大東大戦が終わった後にエディーから「well done(よくやった)」って一言メールがきて。こういうのってきっかけじゃないですか。そのとき「ありがとうございました。もし2月にチャンスがあったらイギリスに行ってもいいですか」って送ったら「全然問題ない。いつでも来い」って言ってくれて。それで滝澤(佳之FWコーチ)を連れて行きました。

――帰国後、滝澤FWコーチの指導の変化を感じますか
 滝澤は本当に変わりました。分かっていてもできないチームって多いですが、一人で仕事をしないっていうのがすごく大事。ラグビーにはラグビーのコーチ、S&Cコーチ、メディカルトレーナーがいますが、ほとんどのチームがセクショナリズムといって、自分の仕事だけはするけど横とのつながりがない、連動しないです。でもこのコーチングじゃ絶対に勝てないです。世界どこいっても勝っているチームはこの3つが連動していて、一緒に仕事をしている。例えばS&Cコーチはただウエイトをするのではなくて、ラグビーに必要なのはこうだとか、この選手に対してはどうアプローチしていかなきゃいけないとかをラグビーコーチと話しながらやらなきゃいけない。自分だけの知識だけでウエイトしても、全くそれがラグビーには生かされないです。だから滝澤は帰ってきてから率先してS&Cコーチとかと事前に話し込みとかをやってくれています。

――次は新体制について伺います。主将には福田選手が選ばれました
 ヘッドコーチのときから何人かのリーダー候補の選手に対しては期待をしながら接していましたが、その中で福田を選びました。ずっとグラウンドに立ち続けているっていうのが彼の一番の強みです。昨年、多分ケガで休んだことはほとんどなくて、それって本当にすごいことだと思います。あとはやっぱり駄目なことを駄目って言えるところですよね。

――例年とは異なり副将を置かなかった意図とは
 副将を置くと、主将と副将で完結する傾向がある。チームを良くしていくためにはどうしていかなきゃいけないかと考えたとき、今年は特にみんなに関わっていってほしいと思ったので、主将だけにしてリーダー陣を置きました。だからみんなで寮のことも私生活のこともラグビーのことも話し合って、リーダー陣が自分たちのグループとコミュニケーションを取ってリードしていくことが狙いです。明治は横の学年のつながりは強いけど、縦のつながりは全然ない。だから縦のつながりを強くしていきたいですね。

――新たにBKコーチには、監督と同期の伊藤宏明氏が就任されました
 たまたま日野自動車のコーチをしていた昨春から練習を見に来てくれて、いろいろと話す機会がありました。自分が監督になることを考えていると、本当に良いコーチって誰なんだと思ったらなかなかいないんですよ。伊藤はもともとラグビーのことを良く考えているし、何よりも明治が大好きなんですよね。あとは社会人とは違う、染まっていない大学生の指導っていうのに魅力を感じたと思うし、それが良いコーチだったら呼ばないわけにはいかない。日野がトップリーグに昇格した時にはこっち(明治)に来てくれるって話になっていたけど、トップリーグのコーチは箔(はく)が付く。でも彼は明治でやりたいって言ってくれたね。それはありがたいし心強い。伊藤とは大学3年生の頃から一緒にレギュラーで出始めて後期に同じ部屋だったけど、毎日ビデオを見てイメージを共有し合っていたね。それが一番思い出深いかな。まあでもよく一緒にいましたよ。あとはお互いの嫁さんが大学生の頃から付き合っていた人なんだけど、4年生のクリスマスのときに4人で箱根に泊まりに行きましたね(笑)。

――ゲーム内容についてもお聞きしたいです。今シーズンのプランを教えてください
 昨年から大きく変えることはしません。昨年のラグビーがダメだったかって言ったらそうじゃないと思うし、逆にそこからプラスして付け加えられるものを付けていくイメージかな。もっと個人のレベルアップに特化していくことに取り組んでいます。ボールキャリーのスピードのところとか、ディフェンスの早い上がりとか。チームとしては、ドミネートスクラム、デンジャラスアタック、ハンティングディフェンス、フラッシュトランジション、スマッシュブレイクダウン、この5つの柱≠掲げています。ラグビーの大事な要素なので、言葉でイメージしやすくしました。あとは今年から他大で指導していたコーチを招いて、レスリングの練習を始めました。今年はブレイクダウンもスマッシュしなきゃいけないし、取り返さなきゃいけないディフェンスをするので、レスリングの要素は大事になってきます。そういうのも取り入れながら選手に刺激を与えています。

――早速、4月30日に帝京大との初戦を控えています
 現時点では、ベストメンバーで戦おうと思っています。昨年の春だったらいろいろなメンバーでと思っていましたが、今年に関しては見極めてそのメンバーで戦いたいかな。でも個人のベースのところしかやっていないので、そこをこの春どれだけ出せるかかな。帝京大も個が強いチームなので、その個に対してどれだけ対抗できるか、どこで勝てるのかっていうところを見たいです。W杯と同じ会場でできるっていうのは学生にとって良い経験になると思うし、それが昨年の(大学選手権)決勝の相手だから、一発目の試合にしてはモチベーションの保てる試合です。

――9連覇を果たし、チームカルチャーの確立した帝京大に勝つためには
 今年のキックオフミーティングでは「大学日本一という目標にプラスして明治の歴史の中でベストなチームになりましょう」と話しました。今年から外国人枠が3になりますが、外国人3人のチームに対して勝つだけで明治にとっては価値のあること。またラグビー以外でも明治大学の看板を背負っているという自覚を持って、誰からも尊敬され愛される人間の集団になろうとも話しました。それかできるようになれば今までにない明治のベストなチームになれると思うし、それがどんどん積み上がっていくことでチームカルチャーになっていく。本気でそこにこだわって個が強くなっていけば、外国人3人だろうが関係ないかなと思います。

――グラウンド以外での私生活で重要になってくる部分はどこですか
 昨年よく言ったのは、細かいことや小さいことを徹底してやれるかということ。ラグビーではもちろん、私生活でのあいさつとか身だしなみとか。あとはウエイト場の使い方とかね。昨年はウエイトやった後に器具を片付けないままでしたよ。びっくりして。実際、散らかっているのときれいにしている写真を見せました。どっちが強いチームに見えるって言ったら、絶対片付いている方って言うじゃないですか。やっぱり思っていてもできないんですよね。良い人間のいるチームが勝つと思います。そういうところをしっかりとやるのが僕の仕事だと思います。

――ご自身にとって「Exceed」とは
 選手たちの思いが詰まっていると思います。昨年あそこまでいったらそれ以上の結果を出さなきゃいけないし、昨年の自分たちを超えなきゃいけない。でも今年は、どれだけ昨日の自分をちょっとでも良くできるかとか、そういうところにこだわれるかだと思います。だから昨年みたいにマインドセットって口うるさく言わないですし、もうそんなレベルじゃない。絶対にスタンダードは上がっているし、今年僕が言わなきゃいけないことは、一日一日成長しているかとか本当に昨年の自分を超えられるのかとか。昨日までオフだったので、グラウンドにスローガンのバーナーを付けました。今日の朝練でそれを見てやらなきゃなって思った選手もいたんじゃないかな。毎日、昨日よりも良くなるってそんな簡単じゃないけど、そういう意識の中でできるかどうかが大事じゃないかな。

――最後に意気込みをお願いします
 春季大会は公式戦ですが、毎週部内で競争してそこで勝った選手を試合で使っていくシーズンにしたいです。あとは今やっていることをしっかりと試合で出せるか、それら二つは一番見ていきたいところです。また今年は僕も新しいチャレンジになるので思い通りにいかないこともあると思いますが、ぶれずに1年間やっていきたいです。

――ありがとうございました

[木村優美]

◆田中 澄憲(たなか・きよのり)平10文卒
 今年度より監督に就任。在学時には監督不在の中主将を務めて、チームを大学選手権準優勝に導いた。卒業後はサントリー・サンゴリアスに入社。2005年には7人制日本代表に選出され、ワールドカップにも出場。2010年度に現役引退し、2012年度からサントリーのチームディレクターに就任。2016年度にはトップリーグ、日本選手権と2冠達成を支えた。



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